作成中。順次公開予定です。帝国編全編公開中
アストロキングス司令官と 副官のエミリーが、次元の亀裂に突入した後からストーリーは始まります。
エミリー 「次元エネルギーの密度診断作業の準備完了。3...2...1...数値確認完了。状態、安定化。司令官、安定化の状態を確認しました。全艦隊が無事に亀裂を通過しました。」 アストロキングス司令官 「アルファ集結ポイントまでの到着予想時間は?」 「通常航行を維持すると仮定しましても、測定不能です。周辺セクター上で探知される星系配列の分析結果、想定データと一致しません。」 「なるほど、どうやらとんでもない場所へ入り込んでしまったようだな。仕方ない。帰還の準備をしてくれ。」 「クルックス艦隊特有の航行残骸物が捕捉されました。分析の結果、5日以上が経過したものと推定されます。推定規模は我々が追跡していた艦隊規模とほぼ同じです。」 「ということは我々の進行方向は正しかったということだな。だがクルックス帝国がある次元の銀河系とは明らかに違う銀河のようだが...ひとまずは全艦隊のデータリンクを活性化させ、自動航行モードに変換し君に統制を任せる。奴らを追跡してくれ。」
1-1
「交戦警報!全艦隊、交戦に備えて戦闘陣形に転換します。」 「どうした?クルックス艦隊の追跡に成功したのか?」 「クルックスではありません。識別不能なタイプの艦艇集団です。 数は約1万以上。攻撃陣形と推定される形態で布陣しており、物凄い速度で接近中です。」 「とんでもない次元の銀河系に来てしまったのは確かなようだな対話で解決しようと思ったが、相手が敵対的な態度をとる以上、やむを得ない。応戦だ。」
戦闘:帝国軍艦隊長
「敵艦隊が撤退を開始しました。」 「味方艦隊の被害状況は?」 「こちらの被害は軽微ですが、敵艦隊も同じその規模に比べ被害は軽微なものと推定されます。司令官、追跡しますか?戦術データの分析結果、意図的に誘引を図った罠である可能性が濃厚です。」 「クルックスに関する手掛かりを得られるかもしれない...とりあえず相対速度ゼロで追撃してみる。戦列が再編され次第、追撃陣形に転換してくれ。」
1-2
: 「侵入した宙域内にクルックスとみられる艦隊の一部を捕捉しました。新たに探知された追跡対象の艦隊は確認できません。追跡の続行は不可能です。」 「クルックス艦隊に攻撃されたのか?」 「追跡対象の艦隊を最後に捕捉した時刻から追跡失敗までの時刻の間隔を、味方とクルックス艦隊の平均交戦時間を記録したデータと比較した結果、その可能性は極めて低いものと思われます。小惑星など意図的にどこかに移動し潜伏しているものと推定されます。」 「とりあえず目の前の敵から処理しよう。捕捉したクルックス艦隊を攻撃するぞ。」
戦闘:クルックス守護者
「敵艦隊の全滅を確認、戦闘が終了しました。戦闘分析結果、交戦相手はクルックス偵察艦隊の小規模分遣隊と推定されます。」 「航路の追跡は可能か?主力艦隊が合流する前に偵察艦隊を何としてでも処理する必要がある。」 「かしこまりました、司令官。偵察艦隊の分遣隊の一部が周辺の座標宙域に布陣しているものと推定されます。計算上、追跡可能な経路を辿って行けば分遣隊、そして最終的には偵察艦隊を発見可能と思われます。」
1-3
「クルックス偵察艦隊の分遣隊と思われます。艦隊を戦闘陣形に転換します。」
戦闘:クルックス戦士
「艦隊の被害状況を確認し直ちに次の目標座標へと移動する。」
1-4
「現在、艦隊の進行経路上に接近中の未識別個体群が捕捉されました。ほどなく遭遇することが予想されます。」 「今度は敵が先に我々を見つけたようだな。」
「戦闘が終了しました。残存のクルックス艦艇はありません。」 「三番目の偵察艦隊の分遣隊だったのか?偵察艦隊本体との距離がどんどん狭まってきているな。次の目標座標へと移動する。」
1-5
「目標差表宙域にクルックス偵察艦隊の分遣隊とみられる艦隊が確認されました。最後の分遣隊と推定されます。」
「残るは偵察艦隊の本隊のみだな。」 「司令官、長距離レーダーに相当数の艦艇が補足されました。複数の艦隊が集結した状態のようです。」 「まさかクルックス偵察艦隊が...こちらに向かおうとしているのか?」 「違います、例の識別不能な艦隊と同じ艦種と分析されます。」 「タイミングが悪い。いったん、最大限距離を置きながら退却し艦隊を再編しよう。」 「こちらはこれ以上接近しようとしてはいません。集結中だった艦隊がいくつかに分離し、それぞれ別の方向へと移動を開始しています。」 「どういう作戦なのかはわからないが、あの数で今すぐに攻撃してくるわけではないのならひとまずは安心だ。最大限探知距離を維持しつう周辺の小惑星地帯まで退却だ。」
ミッターマイヤー 「動きを見るに我々の存在に気付いたようだな。」 ロイエンタール 「作戦通りだ。」 「そうれはそうとしても、卿もやはり気になるようだな。」 「まあな。オーベルシュタインの作戦はどうも気に入らん。やつが反乱軍と手を結ぶとは考えられんが。」
2-1
「高速で接近中の敵位置艦隊を捕捉!こちらの位置を把握されてしまったようです。」 「せっかちな敵だな。まるで我々がここに退却することを知っていたかのようだな。」
戦闘:「疾風」ミッターマイヤー
「敵は退却した。」 「ただ、敵艦隊の艦艇消耗率は2%にも満たないものと推定されます。追撃を実行しますか、司令官。」 「どういうことだ...おかしい。強硬偵察に過ぎなかったということか?仮にこれが事実だとすれば、第ニ波の接近は明らかだ。ひとまずは戦列を再編する。」
「敵は退却した。」
「ただ、敵艦隊の艦艇消耗率は2%にも満たないものと推定されます。追撃を実行しますか、司令官。」 「どういうことだ...おかしい。強硬偵察に過ぎなかったということか?仮にこれが事実だとすれば、第ニ波の接近は明らかだ。ひとまずは戦列を再編する。」
2-2
「敵の第二波と推定される艦隊が再び高速で接近中です。データリンク確認完了。全艦隊、応戦を準備します。」
戦闘:「金銀妖瞳」ロイエンタール
「前回同様、再び敵は撤退中です。」 「我々を疲弊させる作戦か...?」 エミリー 「データベースの検索結果です。過去の人類の戦史にも似たような動きの戦術が使用された例がいくつかあります。そのひとつがこうした小規模構成で敵を疲弊させ弱体化させた後、大規模本隊で攻撃し一撃で撃退するという方法です。その他にも...」 「このまま黙って攻撃され続けるわけにはいかない。最大戦速で敵を追撃する。」
2-3
「敵艦隊にもうすぐ追いつきます。」 「射程内に進入すると同時に攻撃を開始するように。」 「艦隊の側面から別の敵艦隊が出現!非常に至近距離です。急速度で接近中です。」 「どこに隠れていたんだ?」 「追跡していた敵艦隊が反撃を開始しました。」 「これは...挟み撃ちにされる前に各個撃破するしかない!」
「あとは卿に任せる、ロイエンタール。」 「了解した、まずはこの程度で十分だ。俺もすぐに閣下と合流する。」
「側面から出現していた敵艦隊が退却していきます。」 「よし、残るは一つのみ。」
2-4
「目標はクルックス艦隊だがいったい今何をしているのかわからない。 あの集団とは対話で解決したいのだが。」 「通信自体があちらの艦隊のものに対応できるよう調整は可能ですが、意図的にこちらとの通信を避けているようです。」 「クルックスとの関係を誤解しているようだが、こう攻勢攻撃をかけられては対話のしようもない。」 「残りの相手艦隊が間もなく交戦距離内に進入します。」
「敵艦隊の退却に向けた機動を確認。 低速で後退中です。」 「まるでついて来いと言わんばかりだな。 あちら側の狙いはこちらの戦力弱体化ではなく誘引作戦かもしれない。」 「戦術データの分析結果によれば、誘引策である確率が高いです。」 「あとをついて行けば何か発見できるかもしれない。 危険は承知であちらのお望み通り動いてやるとするか。」
「吾々のあとをついて来ている。全て作戦通りだ... しかし、一度ぐらいは正面から戦ってみたかったのだが、残念だ。」
2-5
「閣下。 ミッターマイヤーとロイエンタールが帰投しました。」 「あの艦隊はどうなった?」 「作戦通り準備しておいた包囲網内に進入中です。」 「よし、私も出よう。」
「敵の主力と思われる艦隊を捕捉しました。 我々の艦隊がここへ進入して来るのを待っていたようです。」 「結局は誘引策に引っかかったということか。 戦闘しようが対話で解決しようがここでけりをつける。 これ以上無意味な犠牲と時間の浪費は...」 「艦隊の両側面と後部にも敵艦隊が接近中です! 包囲されました!」 「前方で待機していた艦隊が中核のようだな。 前方の艦隊に集中して応戦する!」
戦闘:「常勝の天才」ラインハルト
「敵艦隊が退却を始めました!」 「艦隊の側面と後部の状況はどうなっている?」 「他の敵艦隊も同時に交戦を中止し退却しています。 通信要請です! 相手の旗艦と推定される艦艇から通信要請が入ってきました。」 「接続は可能か?可能ならば接続を頼む。」 「通信互換性確保作業が完了しました。接続可能です。 接続します、司令官。」 「部下たちから話は聞いている。確かに高く評価すべき戦闘能力だ。 異邦の者よ。」 「あなたがそちらの総指揮官ですか? どうして我々の艦隊を攻撃し続けるのですか?」 「わかりきったことをいう。 ここは銀河帝国の宙域である。貴様らは侵略者なのだぞ。 貴様らのように突如現れた怪物たちが既に辺境の帝国臣民たちに甚大な被害を与えた。 吾々が貴様らに攻撃を行うのは当然ことだ。」 「怪物たち...?クルックス艦隊のことですか?」 「クルックス?貴様らはあれをそう呼ぶのか?」 「そうです。私たちはその怪物を追いかけてここまで来ました。 私たちの目的はクルックス艦隊の撃滅であり、あなたたちと無益な戦闘をすることではありません。」 「やはり...あやつらと敵対する集団だったのか。面白い。」 「これ以上の交戦状況は望みません...あなたたちにも何の利益もないのではありませんか? 私たちはクルックス艦隊の殲滅だけが目的です。」 「吾々も無益な戦闘で被害が発生することは望まない。」 「この付近に相当な規模のクルックス偵察艦隊がいることは確かなのですが... 何かご存知ありませんか?」 「最初に帝国領を侵略してきた奴らのことなら既にすべて処理した。」 「それは助かります。もし処理が遅れていたら奴らの主力が...」 「しかしだ。」 「しかし?」 「たった今、主力と言ったか? そう、最初に来た奴らの何倍もの規模の大艦隊が今、帝国領辺境のどこかにいる。 卿らの言う主力艦隊であろう。」 「もうこちらまで来ていたのか... 困りました。 偵察艦隊ならまだしも主力艦隊は私たちの艦隊だけでは対抗できない相手です。」 「なるほど。吾々の方で可能な限り、互いに損害を被ることなくクルックス艦隊の主力とやらを撃滅させる方法を考えてみよう。」 「そんな方法があるのなら幸いですが。」 「それまでに卿らの艦隊に頼みたいことがあるのだが、引き受けてくれるか?」 「まずは内容を聞かせてください。どういったことでしょうか?」 「現在、主力艦隊の位置はまだ把握できていない。 敵を撃滅する方法が見つかったとして、敵の位置がわからなければ何の意味もなさない。」 「どういうことか理解しました。私たちの艦隊が偵察と捜索を行います。」
3-1
「彼らと戦闘をした経験や、彼らがクルックス偵察艦隊を撃滅したことを考えれば時間は多少かかったが事態が円満な方向に進んでよかった。 彼らの立場としては我々を誤解し攻撃したのは当然のことだろう。だが... もし誤解が解けなかったなら大変な状況になっていたな。 それはそうと早く主力艦隊を見つけなければ...」 「クルックス主力艦隊の現在位置を推定する基礎データが足りません。」 「正確には無いといった方がよさそうだな。 偵察艦隊がすでに帝国軍によって撃滅した状態だったということは... 我々が追跡していたあの分遣隊は何をしていたのだ? クルックス主力艦隊が現在こちら側の次元の銀河に来ていることから察するに、」 「主力艦隊の移動準備中だった、もしくは準備を終えた直後であった可能性が高いと判断します。」 「なるほど... ということは彼らと遭遇したあのセクターのどこかに主力艦隊がいる可能性が高いな。 よし、そっちに行ってみよう。」 「艦隊陣形を快速陣形に変更します。 航海記録上の該当の座標まで今すぐ移動します。」
「判断は間違っていなかったようだ。 あいつらは主力艦隊の哨戒役を務める分艦隊に間違いない。」 「司令官の仰る通りです。 戦闘記録から敵艦隊のタイプを分析した結果、主に哨戒役を務めるクルックス艦艇です。」 「そう遠くない場所にいるようだな。 一体何を企んで大人しくしているんだろう?」
3-2
「クルックス小規模分遣艦隊と見られる個体の移動が捕捉されました。」 「移動方向は?」 「帝国軍艦隊が駐屯中だったセクターの座標付近と推定されます。」 「航海経路の逆推算追跡は可能か?」 「データはとりあえず入力しておきました。 予測信頼度はそれほど高くはありません。」 「見逃すわけにはいかない。 先制攻撃の準備をするように。」
「敵の全滅を確認。味方艦隊の損害は軽微です。」 「逆推算結果は出たか?」 「予想される経路の座標を推算し入力しておきました。」 「では直ちに移動する。」
3-3
「予想経路の最後の座標に到達しました。」 「まだ何も観測できていないということはどうやら失敗か...」 「司令官、敵艦隊です! 規模や形態から分析して別のクルックス分遣艦隊のようです。」 「了解。今度もデータを先に入力しておいてくれ。」 「承知しました、司令官。 敵艦隊も我々の艦隊を捕捉したようです! 攻撃陣系に転換し接近中。直ちに対応します。」
戦闘:クルックス航海士
「敵艦隊の推進体残余物の分析結果、現座標宙域からそう遠くない位置から出発したものと推定されます。」 「希望が持てる情報だ。 今度こそ主力艦隊を見つけられそうだ。」
3-4
「敵分遣艦隊の出発座標宙域と推定される最後の予想地点です。」 「何もないな...」 「仰る通りまだ何も探知できていません。 偵察艦隊からの報告も同様です。」 「向こうの肉眼で見える惑星は有人惑星か?」 「帝国軍からもらった星図データによれば銀河帝国領に属する有人惑星です。 人口は約...」 「人が住む惑星にしては静かすぎないか? 連絡船やら貨物船が従来する様子が全く見えない...」 「この次元の銀河の文明水準を我々の銀河と同じだと仮定した場合、 人口対惑星周辺の艦艇航行量データから判断して、最低基準値にも満たない状態です。 異常状態との結論が導出されます。」 「そうか。受け取った星図データ上でその惑星にリングがあるとの内容はあるか?」 「該当の惑星データにリングに関する記録はありません。」 「あれは惑星のリングではないということだな。 ということは... 全艦隊、即時に戦闘陣形を組み外套のセクターから離脱する!」 「敵艦隊です! 惑星のリング全体が推進体を持つ艦艇と見受けられます。 クルックス主力艦隊です。 現在突出した一部が高速力で味方艦隊側面に接近中!」
戦闘:クルックス砲術将校
「全艦隊無事に離脱できたか? 艦隊の被害状況を今すぐ報告してくれ。」 「約95%の艦隊が無事に離脱に成功しました。 ただ、データリンクが遮断され正確な状況把握は困難ですが、 現在相当数の艦艇が小破。中破した艦艇の報告も次々に入ってきており、その数は増加しています。」 「追撃を試みるクルックス艦隊はいるか?」 「現在、味方の索敵範囲内では捕捉されていません。」 「それはよかった... 時間がない! 無人偵察衛星をデブリに偽装させ、最大限広範囲に散布するように指示し、 該当の作業が完了し次第、快速陣形を構成して最大速度で帝国軍艦隊が駐屯中のセクターに移動する。」 「承知しました、司令官。」
3-5
「もうすぐで到着だ。 帝国軍からの報告はまだ来てないのか?」 「まだです。」 「クルックス艦隊を撃滅する方法が早くわからないと困るのだが...」 「司令官、敵艦隊を捕捉しました!」 「何だって?もうここまで追いついてきたのか?」 「そうではないようです。 以前交戦した程度の規模の分遣艦隊です。」 「目的は偵察か?吾々の駐屯宙域を探し出して奇襲するつもりのようだな... 全艦隊、交戦の準備を。」 「現在、艦隊戦力がかなり低下した状態です。 シミュレーション結果では相当な被害が発生するとの警告が出ています。」 「仕方ない。このまま放置していてはもっと危険になる。」
「敵クルックス艦隊の追加捕捉なし。殲滅を確認しました。」 「ふう... 何とか乗り切ったな。」 「接近中の多数の艦隊を確認しました。」 「何だって?どうするんだ...他にも艦隊が来ていたのか?」 「帝国軍の艦隊と推定されます。」 「...次からそういった情報は先に報告してくれ。」 「卿の戦闘はよく見させてもらった。 素晴らしい戦闘指揮だった。」 「...ただ見てないで支援してくれてもよかったのですが。」 「我々が手を出す必要もないと思ったのでな。」 「閣下が卿との通信をお待ちだ。」 「いい知らせがあるようだな。」 「クルックス主力艦隊の位置を探し出しました。」 「そうか。 ちょうどいい。私もクルックス艦隊を撃滅する方法について決定を下したところだ。 オーベルシュタイン。」 「はい、閣下。 ただ今より作戦計画を説明します。 まず、敵主力艦隊は相当な規模の大規模艦隊です。 これに対し正面から戦いを挑めば、いくら我が軍の提督と卿の能力が優れていても 甚大な損害を被ることは火を見るよりも明らかです。 戦闘が長引くほどこちらにとって不利な状況となりますそのため、 敵を短時間内に一掃することが望ましいとおもわれます。」 「正面から挑むことなく相手を一掃する方法などあるのですか?」 「…… 事態を打開するカギは近くにあります。 我が帝国軍の誇るイゼルローン要塞の要塞砲「雷神の槌(トゥール・ハンマー)」...... あの火力をもってすればすべての艦隊を蒸発させられるでしょう。 ただ、一つ問題が......。 その射程圏内に敵艦隊全体が入っていなければ意味がありません。 ここで、卿の役割が重要となるのです。」 「まさか囮になれということですか?」 「そうです。 あなた方の艦隊データを確認しました。 我々が主砲を発射する直前に卿らの艦隊に信号を送れば、無事に射程圏から離脱することが可能でしょう。 ただ、誘引作戦の特性上、ワープを使用するのは不可能です。 卿の艦隊は敵艦隊との交戦経験が豊富なのでワープを使用せずとも敵艦隊の誘因が可能と判断しました。 卿の艦隊への評価に意義がありますか?」 「もっともな話ではあるが...」 「万が一、不可能と言うのなら... 吾々双方に相当の損害が出ることは覚悟しなければならないでしょうな。 先の話の通り、戦闘の長期化が予想され、その過程で罪のない多数の民衆も犠牲となる。」 「罪のない人たちの犠牲... ...分かりました。 我々に任せてください。」 「詳しい作戦計画はすぐにデータを送ります。 以上です。」 「卿の幸運を祈る。」
4-1
「囮役か...気が進まない。」 「我々の艦艇が彼らより技術面で優れているのは事実です。クルックスに関するデータも十分です。 計画通りに実行されれば、計算上のリスクは最小化が可能と推定されます。」 「そうとは言ってもだ... 気のせいだろうが作戦を説明していた者から何か不穏な感じがした。 ひとまずは彼らの作戦計画に従うが用心するに越したことはない。」 「受けとった作戦計画データを艦隊統制システムに入力しておきました。」 「最初の目標は何だ?」 「敵艦隊です!」 「いきなり敵の主力艦隊が目標だと?」 「長距離偵察任務中だった味方艦艇が敵艦隊を捕捉しました。 小規模分遣艦隊の規模と同じです。」 「あ...」
「敵艦艇全滅。 味方の被害は数隻が小破程度で済み軽微です。」 「これで奴らが我々の動きを先に探知することは難しくなっただろう。 作戦遂行地に向かって速やかに移動する。」
4-2
「偵察衛星から収集したデータの分析はすべて終わったか?」 「もう少しで終わりそうです。 主力艦隊の大よその移動経路は推定可能です。 ですが前回同様に偽装の可能性も否定できません。」 「その点なら特に気にする必要はない。 奴らの正確な位置の特定は重要ではない。 そこそこに刺激して関心を引き寄せた後、誘引にさえ成功すればいい。 ダミーの艦隊信号送出器からちょうどいいタイミングにきちんと発信ができるように準備を頼む。」
戦闘:クルックス異端審問官
「設置しておいた探知機の反応はどうだ?」 「はい、大きな動きに関する探知はまだ... たった今何かが移動する動きを捕捉しました!」 「よし、ダミー艦隊の信号送出器を発信状態に転換してくれ。 全艦隊、次の目標座標に向かって全速で移動せよ!」
4-3
「帝国側から司令官に通信要請が入ってきました。」 「ラインハルトか?」 「オーベルシュタインと名乗っております。」 「あ、作戦を説明してくれたあの無表情な男か。 接続してくれ」 「作戦は順調に進行していると聞いております。 星図データを見ればわかるように、イゼルローン要塞はイゼルローン回廊に位置しています。」 「はい、承知しています。」 「イゼルローン回廊に接近するうえで注意するべき点があります。 イゼルローン回廊にはクルックスの他にも銀河帝国に敵対する叛乱軍勢力が存在します。」 「反乱軍...?」 「彼らは過去、銀河帝国に反旗を翻し戦いを挑んできた集団です。 その実態は海賊集団の類に過ぎません。 回廊付近や回廊内で姿を現し、攻撃や略奪を行ってくる可能性があります。 奴らと遭遇したら作戦の障害とならないように必ず先制攻撃で撃退してください。」 「そうですか。ですが...」 「叛乱軍の艦艇識別データを送信します。以上です。」 「まったく。。。自分の話だけするんだから。」
「現在までに敵の主力艦隊の移動に変わった点はないか? 信号送出器の誘導通りについて来ているのか、距離維持には問題がないか確認をしてくれ。」 「現時点で特に変わったことはありません。 帝国軍が誘引した他のクルックス艦隊が合流したため規模が多少拡大した状態ではあります。」 「ひとまず安泰といったところか。よかった。 まもなく回廊周辺セクターに進入するが、オーベルシュタインが言っていた叛乱軍の話が気になるな。」
4-4
「司令官、イゼルローン回廊周辺セクター内で動きが補足されました。」 「クルックス分遣艦隊か?」 「違います。 帝国軍からもらった反乱軍艦艇の識別データと一致します。」 「例の反乱軍艦艇か... 数はどれぐらいだ?」 「小規模と推定されます。」 「仕方ない... 誘引作戦の邪魔をされては全てが水の泡となりかねない。 オーベルシュタインの言う通り、先制攻撃を加える。 とりあえず軽く威嚇だけする。」
戦闘:同盟軍艦隊長
「敵艦隊が全て退却しました。」 「海賊集団レベルにしては、 何というか... 動きに編成と規律がよく活かされているようだった。 また現れてもらいたくはない相手だった...」
4-5
「ダミー艦隊の信号送出器の作動を準備しています。 あ、また姿を現したようです! 叛乱軍の小規模艦隊が現在信号送出器の方向に接近中です!」 「なんだと...言ったそばからまたか。 信号送出器の方に接近させてはいけない!」
「敵艦隊が全て退却しました。 前回とは異なり、敵の被害は相当なものと思われます。」 「これでもう無謀な接近は強行しないだろう。 だがちょっと引っかかる点がある。 目的が攻撃であったならあのような艦艇運用はありえないのだが... どう見ても今回の接近方式は強硬偵察が目的としか思えなかった。」 「艦隊構成や諸元、戦闘分析結果から判断して、戦闘よりは哨戒や偵察に適したものと思われます。」 「叛乱軍が聞いた話の通り海賊レベルに過ぎない集団だとしたら、あのような構成と運用は不可能なはずだが。 おかしい点が多い...」
5-1
「艦隊が無事にイゼルローン回廊内に進入しました。」 「クルックス主力艦隊の動向を教えてくれ。」 「狙い通り我々の艦隊規模を大規模艦隊と錯覚しているようです。 引き続き同じ速度のまま静かに追跡してきています。」 「叛乱軍もこれ以上接近してこないだろうし、ひとまず安心だな。」 「帝国軍から周辺にクルックス分艦隊がいるとメッセージが入ってきました。」 「そいつらも誘引すれば作戦もついに無事成功ということか。」
戦闘:クルックス整備将校
「成功です。 撃滅した集団が属していた艦隊の分隊が狙い通りダミーに騙されました。 追撃を試みるものの退却し主力艦隊の方に合流したことを偵察船が確認しました。」 「イゼルローン要塞があるセクターに進入するのも時間の問題だな。 全艦隊に緊張を解かないように伝えてくれ。」
5-2
「目標のクルックス艦隊が分散しました。」 「何だって?」 「現在、各分艦隊の経路を追跡中です。 分散した各分隊の数は多くありません。 想定外の突発的な行動をしてくる前に各個撃破が安全な選択です。」 「時間があまりない。 今すぐ処理してしまおう。」
戦闘:クルックス神殿騎士団
「帝国軍がからの通信です。 オーベルシュタイン提督です。」 「接続を頼む。」 「作戦の最終段階です。 卿の活躍には閣下麾下の提督も皆、驚嘆しています。」 「とんでもございません。」 「イゼルローン要塞の司令官と兵力はすでに要塞砲の準備を終え待機しているようです。 作戦の最終段階まで滞りなく遂行することを閣下も期待しています。 要塞から発射信号が送られてくるはずですので目標座標まで移動して敵艦隊の行く手を阻止し、いましばらく持ちこたえてください。」 「計画内容は熟知しております。」 「...分かりました。 卿の武運を祈ります。」
5-3
「イゼルローン要塞があるセクターに進入しました。」 「クルックス艦隊の動向は?」 「追跡航行速度を上げています。 我々が要塞に進入するものと予想し、その前に不意打ちをかけようとしている模様です。」 「変化があり次第すぐに報告してくれ。」 「司令部? 通信要請が入ってきました。」 「要塞砲の準備が整ったのか?」 「イゼルローン要塞からのものですが、そうではないようです。 こちら側の指揮官との通信を要請しています。」 「何か問題でも起こったのか...? 接続してくれ。」 「自由惑星同盟軍イゼルローン要塞司令官兼駐留艦隊総司令官、 ヤン・ウェンリーです。」 「自由惑星同盟軍...? 帝国軍所属ではないのですか?」 「自由惑星同盟と銀河帝国は長い間戦火を交えてきた関係にあります。」 「え、ということは、イゼルローン要塞は帝国軍の要塞ではないのですか?」 「はい、正確に申し上げれば帝国軍が作った要塞ではありますが... 現在は私たちが占領しています。 私からもいくつかお伺いしてもいいでしょうか?」 「ええ、どうぞ。」 「あなた方は別の次元の銀河からいらっしゃったのですか? それから近頃出現している例の怪物艦隊とは敵対関係にあるのでしょうか?」 「その通りです。」 「吾々の哨戒艦隊への攻撃がありましたが 帝国軍から吾々は敵だと話を聞かされていたのでしょうか。」 「海賊集団と変わりない叛乱軍だと聞きました。 作戦の妨害になるとの判断により攻撃をしましたが申し訳ありません。」 「銀河帝国の側から見れば吾々は叛乱軍ではありますが、私達は民主主義国家の一員です。 それはそうと、どうやら状況が緊迫しているようですね... あの怪物艦隊をイゼルローン要塞の要塞主砲で撃破する計画だったと推察します。」 「我々はその怪物艦隊をクルックスと呼んでいます。 帝国軍は我々がクルックス主力艦隊をここまで誘引してくれば、イゼルローン要塞の要塞砲で一気に撃滅にするという作戦を提案してきました。 つまり私は利用されたということですね。」 「帝国軍の狙いはあなた方を巻き添えにクルックスを撃滅することだったようですね。 通信に成功して本当によかったです。」 「私も何と申し上げればよいのか...」 「まずは目の前の火消しから始めましょう。 私に考えがあります。そのとおりに動いていただけますか? こちらは要塞主砲の発射準備を行います。」 「まだ処理すべきクルックス分艦隊が残ってます。 万が一の状況に備え、主力艦隊が行動を起こす前に撃滅させなければいけません。」 「では吾々も駐留艦隊を出撃させ支援しましょう。」 「我々が追跡したクルックス分艦隊の座標と予想移動経路のデータを送ります。 お互い離れて行動したほうが迅速な対応が可能と思われます。」
戦闘:クルックス操縦士
「敵の撃滅を確認しました。 イゼルローン駐留艦隊側も順調と思われます。 艦隊、次の目標座標に移動します。」
5-4
「目標のクルックス分艦隊を確認しました。 全艦隊、攻撃陣形に転換します。」
我々の持ち場もなんとかけりがついたようだ。 イゼルローン側からはまだ何も連絡はないのか?」 「ちょうど今、通信要請が入ってきました。 すぐに接続します。」 「出撃した駐留艦隊が無事に任務を終えました。 こちらは要塞砲の発射準備に取り掛かりましたが、そちらの状況を教えていただけますか。」 「こちらも準備が完了しました。」 「要塞砲の射程範囲の座標を送信します。 そこまで敵艦隊の誘因をお願いします。」 「了解いたしました。 座標の送信をお願いします。」
5-5
「クルックス主力艦隊が要塞砲の射程セクター内に進入しました。 現在、最大加速中であると思われます。」 「敵艦隊の先頭と我が艦隊が接触するまでの予想所用時間はどのくらいだ?」 「わずか数十秒以内です。」 「我々の艦隊が目標座標を通過することが観測されれば、イゼルローン要塞から要塞砲がすぐさま発射される。 全艦隊戦闘陣形を維持したまま、敵の主力艦隊の先頭を最大限打撃した後、私の指示に従って指定の座標に向かい全速で離脱する。」
「要塞主砲の発射を確認!」 「こんな圧倒的な火力は見たことがない。 あれに巻き込まれたら艦隊全体が一瞬にして粉々になるだろう。」 「クルックス主力艦隊の残存はありません。」 「跡形もなく消え去ったか...」 「イゼルローン要塞からの通信要請です。 ヤン・ウェンリー司令官です。」 「無事に敵艦隊の殲滅に成功したようですね。 艦隊への被害はありませんでしたか?」 「はい。 おかげさまで無事目的を達成できました。」 「もしよろしければの話ですが。 ここを発つ前に要塞に寄っていきませんか。紅茶でも一杯飲みながらお話がしたいのですが... そうそう、ブランデーもありますよ。」 「せっかくですがお断りさせていただきます。 元の銀河に一刻も早く復帰しなければいけません。 それと...その前に寄る所もあります。」 「もし...帝国領にもう一度行くというのならやめた方がいいかと。 前回とはまったく異なる対応をされるとおもいますよ。」 「そうでしょうね。 ご支援に感謝いたします。」 「ご承知の上であれば私から言うことはありません。 道中のご無事をお祈りします。」
6-1
「帝国軍は我々をクルックスと一緒に除去するつもりだったようですね。」 「いや、それが真の目的ではなかったはず... 最悪の状況でもクルックス艦隊は結局は除去されただろうし、帝国の立場としては最善の場合、クルックス艦隊と我が艦隊、そして同盟間で交戦が勃発し、特に同盟に大きな被害が発生する状況を想定していたのだろう。 どのような結果になろうとも帝国軍には損はない。」 「極めて計算的な手法ですね。 ということは報復のために帝国軍に向かわれているのですか? このまま復帰するのが合理的かつ司令官にとっても利益があると判断されますが。」 「そうだろうな。 だが私は彼らに報復しに行くのではない。」
「敵艦隊が退却しました。 「適当にあしらっているな。 予想通り我々を待っているようだ... 全力で我々を阻止し防御しようとはしていないことからして...」
6-2
「帝国軍が駐屯していたセクターまであとどれぐらいだ?」 「もうすぐで到達します。 ですが、そのセクターに今も駐屯している確率は非常に低いと思われますが。」 「行けば分かるだろう。」
「敵艦隊が退却しました。 追撃しますか?」 「いや、目標座標への移動を続行する。」 「接近してくる艦隊を確認しました! 帝国軍艦隊と思われます!」
6-3
「帝国軍艦隊からの通信です。」 「無事に生きて戻ってきたようだな。 オーベルシュタインの計算が狂ったか... それとも、計算通りなのか。」 「あなたとの戦闘を望む理由はありません。」 「何を言う。 俺は卿と一度手合わせをしてみたかったのだ。 閣下からの許可は得ている。絶好の機会だ。」
「帝国軍艦隊が退却しています!」 「改めて分かった... 卿の実力は認めざるを得ん。 次はミッターマイヤーが卿を待っているだろう。 健闘を祈る。」
6-4
「帝国軍艦隊のひとつが物凄いスピードで艦隊後部に接近中です!」 「ロイエンタールを見事退けたようだな? 奴によれば相当の実力の持ち主だということだったが... 「疾風ウォルフ」の名は伊達ではないことを卿に示そう。」 「全速で前進し艦隊を反転させる。 敵に後ろを取られないように!」
「すべて卿の予想通りではあるが、 ロイエンタールとミッターマイヤーを退けるほどとは...やはりあのものの実力は認めざるを得ないな。 私も直接対決をしてみたいものだ。 出撃するとしよう。」 「閣下。」 「止める気か?」 「いいえ。閣下にとって彼らはそこまで危険ではないでしょう。 ただ...彼らが望むところは勝敗を決めることではないと思います。」 「その程度なら私も心得ている。 私の判断だ。これ以上の進言は慎め。」
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「前方に帝国軍総旗艦を捕捉!」 「ラインハルトか... 通信を接続してくれ。」 「無事に生きて帰ってきて何よりだ。 ヤン・ウェンリーとうまく話がついたようだな。 吾々にとっては最悪とも言える結果だったが。」 「なぜ騙したのですか?」 「吾々としては最善の作戦を遂行したまでだ。」
「よし、この位にしておこう。 双方が実質的な損害を被る必要はない。 吾々にとって最善の選択だったとはいえ、悪意のない卿らを巻き込んだことについては謝罪しよう。」 「分かりました。 クルックスにより帝国と帝国の民衆が甚大な被害を被ったことは事実ですから。 同じく外から来た我々に警戒するのも当然です。 私は元の次元の銀河へと復帰します。」 「承知した。 復帰後も卿はクルックスとの争いを続けることになるのだな。 卿の銀河に平和が訪れることを祈ろう。」